インタビュー
働く女性が活躍できる社会を目指して 「年収の壁」対策支援奨励金のことを知り制度見直しへ
「年収の壁」対策支援奨励金の取組として、制度見直しを行った企業様にお話をお伺いしました。
<企業プロフィール>
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事業内容
書籍の出版及び販売
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従業員数
3名
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創業
74年
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インタビュー対象
総務担当者
本事例の3つのポイント
- 少人数ならではの円滑なコミュニケーションによってスムーズな制度改正を実現
- 旧配偶者手当の要件が難解だったことを踏まえて新制度ではわかりやすさを重視
- 制度見直しが企業の魅力向上につながり、採用活動の後押しになることも期待
社員同士で意見を出し合いスムーズな制度見直しを実現
配偶者手当を見直すことになったきっかけを教えてください。
昨今、「年収の壁」がメディアで取り沙汰されるようになり、私個人としても関心を持っていました。そんな中、「東京しごと財団」のメルマガ(コヨカン通信)を通してこの奨励金のことを知ったのがきっかけです。「もしかしたら当社も支給対象かもしれない」と思い、配偶者手当の見直しを社内で提案しました。以前から、共働きが多くなった現代には見合わない制度だと感じていたからです。
当社は社長のほかに従業員3名という少人数の組織。会社の制度や体制、社内ルールに至るまで、いつもみんなで話し合いながら決めてきました。今回も、まずは社長に配偶者手当の見直しに関する奨励金制度があることを報告。社長もそれまで奨励金制度のことは知らなかったのですが、「やってみたらいいのでは」と前向きな意見をだされました。
それから社員にも提案し、概ね賛成の意見でしたが、一部で「子どもと親に対する手当はあるのに、配偶者にだけないのは不平等ではないか」という意見もありました。そうした疑問や課題を一つひとつ検証し、共働きの家庭が増えている中で時代に見合った制度に見直すという方向に進み、最終的に子どもと親の家族手当を増額することで全員の意見が一致しました。
「年収の壁」対策支援奨励金のことを知ったのがきっかけだったのですね。
それから制度見直しまでの一連の流れを教えてください。
まず、子ども手当と親の手当の増額をいくらにするかを全社員で検討しました。
顧問税理士の先生にもご意見をお聞きし、配偶者手当をなくすこと自体に対して「本当になくしてしまって良いのか」というご意見もありましたが、経緯や複数の見直し案を提示したうえで、最終的にはなくす方針でよいのではないか、という反応をいただき制度見直しに向けて動き出しました。奨励金の申請作業は、HPに載っている申請の手引きに則って進めていくだけなのでそれほど難しくなかったです。
手続きの不明点等は「東京しごと財団」に問い合わせると担当者の方がきめ細やかにお答えくださいました。奨励金の申請というと煩雑で面倒なイメージがありましたが、社内協議に入ってから3週間ほどで制度見直しを行えたと記憶しています。
制度改正の中で見えてきたこと
スムーズに制度改正が行えたとのことですが、何かポイントはありますか?
密なコミュニケーションを図るということです。当社はトップダウンではなくボトムアップ型の組織で、何かを決める時は社長ではなく社員が主体となって決めてきました。社員3人とも世代が近いということもあって、毎日の定例ミーティングやランチタイム、飲み会の時などでも話題には事欠きません。それは仕事に関することだけではなく、世の中の情勢や雑談などにも及びます。
「年収の壁」や女性のキャリア問題についても以前からよく話題に出ていました。こうした普段からのコミュニケーションが、スムーズに進んだポイントだと思います。
今回の制度改正で見えた課題や気づきはありましたか?
今回の制度見直しを通して、社員全員が家族手当を理解する良いきっかけになったと感じています。
特に、配偶者手当制度の収入要件については読み取りにくく誤解している人もいました。それは「制度としてよくないよね」という話に発展したため、今回の制度見直しでは家族手当の要件を単純化し、明確でわかりやすい制度になることを目指しました。
次世代にとっても魅力的な組織に
制度見直しによる変化や、今後に期待することはありますか?
今回の制度見直しは採用活動という点でプラスになると考えています。定年を控えている社員もいるので、ゆくゆくは本格的な採用活動を行う予定です。その時に制度の要件を明確に説明できるようになりましたし、支給に該当する方も多くなったのではないでしょうか。
加えて、時代の変化に沿って変革していく柔軟な組織だということもアピールしたいですね。今回新しくなった当社の手当制度を、求職者の方にも魅力に感じていただけたら嬉しいなと思っています。
これから「配偶者手当」制度の見直しを行おうとしている企業にメッセージをお願いします。
企業によって抱えている課題はそれぞれ異なると思いますが、いずれにしても深いコミュニケーションを図ることが、解決の糸口になるのではないでしょうか。当社には元からトップダウンではなく会社が従業員の声をしっかり聞いて取り入れる風土があるので「会社が見直した」というよりも「皆で見直した」という共通認識を持つことができました。
以前は当社にもパート社員がいたことがあります。その方も「年収の壁」を超えないように就業調整をしながら働いていました。「年収の壁」を気にせずに働ける会社が増えることで、社会でスキルを発揮したいと願う女性が就業調整することなく、活躍できる社会になったらいいなと思っています。